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サウナに入ると「うつ病」になりにくいのは本当ですか?

サウナと健康

脳内物質のバランスやストレス、生活環境など複数の要因で発症する「うつ病」。日本では「一生のうち15人に1人がうつ病を経験する」と言われており、誰にでも発症する可能性が高い病気です。回復にも時間を要し、その後もうまく付き合っていく必要があるとも言われていますよね。

実は、そんなうつ病に「サウナがいい」と言われているのです。果たして本当なのか気になりますよね。その根拠や理由を調べてみました。

目次

1.サウナの利用頻度が高い人は、うつ病リスクが低い傾向にある

1.サウナの利用頻度が高い人は、うつ病リスクが低い傾向にある
2018年、アメリカのメイヨークリニックが「週に4~7回サウナに入る人は、週1回の人よりも、77%も精神疾患(うつ病も含む)にかかるリスクが低い」という研究結果(※)を示した論文を発表しています。
フィンランドでも同じような研究(2018年※)が明かされており、生涯でサウナに入る頻度の多い人の方が、精神疾患のリスクが低いという結果が報告されているんですよね。
もちろん、サウナに入ることで必ずしもうつ病などの精神疾患を発症しないとは言い切れません。
ですが、これらの研究結果を元に考えれば、日常的にサウナに入る人=将来的にうつ病などのリスクが低下する傾向にあると考えられています。

※Cardiovascular and other Health Benefits of Sauna Bathing: A Review of the Evidence, Mayo Clinic Proceedings, 2018

※加藤容崇著,『医者が教える 究極にととのう サウナ大全』,ダイヤモンド社,2023年7月,134ページ

2.現在うつ病の人は?サウナドクターが興味深い実験を公開

2.現在うつ病の人は?サウナドクターが興味深い実験を公開

海外の研究結果で分かっていることは「サウナ浴はうつ病のリスクを低下させる」というものでしたが、現在「うつ病」で苦しんでいる方も、サウナに入ることで症状が緩和するのか気になるところ。

日本サウナ学会理事であり、サウナドクターとして活躍する加藤容崇氏は、うつ病を患う方と一緒にサウナに入ったときの体験談をこうを語っています。

私自身、一度、うつ病を患っている方と一緒にサウナに入ったことがあります。その方は、長年うつ病を患っていらっしゃって抗うつ薬が手放せない状態だったそうです。私が出演したテレビのサウナ特集をみてサウナに入ったところ薬がなくても数日間は非常に調子良く過ごせるようになったとのことでした。実際に一緒に入ってみると、2セット目以降は別人のように動きが速くなり、話し方もスムーズになりました。あまりにも変化が劇的だったため、とても驚きましたが、もちろん、これは被験者が1人しかいないため、これだけで科学的な議論をすることはできませんし、効果があると断定はできません。(※引用元1)

加藤先生はこの実験を経て

サウナにはうつ病の予防をする効果だけでなく、すでにうつ病の人の症状を軽くする効果もあるかもしれない(※引用元2)

と感じたそうです。

この結果だけで「サウナに入るとうつ病が改善する」とは言えませんが、サウナが大きな可能性を秘めていると言えるのではないでしょうか。


※引用元1:DIAMOND ONLINE「サウナがうつ病に効果があると考えられるこれだけの理由」

※引用元2:※加藤容崇著,『医者が教える 究極にととのう サウナ大全』,ダイヤモンド社,2023年7月,135ページ

3.サウナがうつ病にいいと言われる理由

あらゆる研究結果を元に「サウナに入ることでうつ病のリスクが低下する」と言われる根拠を探してみました。

ここからは、なぜサウナがメンタルケアによいと言われるのか、その理由を解説します。

①セロトニンなど「幸せホルモン」が増加するから

うつ病は、脳内物質である「セロトニンの不足」によって起こると言われるのは有名な話ですが、実はサウナに入ると、体温上昇やリラックスなどの効果によって、セロトニンが増加することが分かっています。
また、鎮静効果や幸福感が味わえる「β-エンドルフィン」、穏やかな感情に導いてくれる「オキシトシン」などの分泌も盛んになることも、サウナがメンタルケアにいいと言われる理由です。

②ストレスホルモンの低下するから

ストレスを感じると、腎臓上部の副腎皮質から「コルチゾール」と呼ばれるストレスホルモンが分泌されます。 コルチゾールが増加すると、記憶を司る海馬などが刺激されるため、不安や気分の落ち込みの原因につながると言われているのです。
ですが、ポーランドで行われた研究結果(※)によれば、サウナに入ることでコルチゾール濃度が低下したという結果が明かされているそうです。
ストレスが溜まっているときにサウナに入ると、日常のギャップ・反動でととのいやすいとも言われています。まさに絶好のサウナチャンス。 確かに「イライラする」「疲れた」と感じているときほど、サウナの恩恵を感じやすいですよね。

※みんなのホルモン研究所,「ストレス解消法のサウナとホルモン分泌について

③脳のエネルギー消費が抑えられ、思考が落ち着きやすくなるから

脳には、
  • 何もしていないときに働く回路:DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)
  • 集中しているときに働く回路:CEN(セントラル・エグセグティブ・ネットワーク)
があります。 DMNは、エネルギー消費が大きく、ぼーっとしている時でも勝手に思考がめぐりやすいのが特徴です。
うつ病の人は、この「DMN」が過活動になりやすいと言われており、
  • 意識していないのに考え事が止まらない 
  •  自分に注意が向きすぎる 
  • 疲れ切って動けなくなる
という状態を招きやすいと言われているのです。
一方、サウナは「熱い→冷たい」という温度刺激を受ける環境です。
この刺激によって、一時的に注意が身体感覚に向くため、頭の中の思考が強制的に止まりやすくなります。 その結果、DMNの活動が抑えられるため、脳のエネルギー消費が下がり、思考のループから抜けやすくなるという可能性があります。
もちろん、うつ病の治療として「サウナが脳回路を改善する」と明言できるわけではありませんが、「考えのループが軽くなる」などの体感が得られやすいことは、メンタルケアの視点でも大きなメリットと言えますよね。

④自律神経がととのい、睡眠の質が上がりやすくなるから

ストレスやメンタル不調と深く関わるのが、自律神経の乱れです。 交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)の切り替えがうまくいかないと、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりしやすくなります。
サウナは、
  1. サウナ・水風呂で交感神経が優位になる
  2. 外気浴で副交感神経が優位になる
という「交感神経 → 副交感神経」への大きな揺れをつくり出す入浴方法です。
この自律神経の切り替えが、心身をリラックスに導いてくれるため、睡眠の質の向上に効果が期待できると言われているのです。
サウナは直接うつ病を治すものではありませんが、睡眠改善 → メンタルの回復しやすい土台づくりといったサポート的な役割を果たしてくれる可能性があります。

参考 ・医療法人社団燈心会ライトメンタルクリニック,「サウナが精神にもたらす影響とは?うつ病に効果的?精神科専門医が解説!」 ・加藤容崇著,『医者が教える 究極にととのう サウナ大全』,ダイヤモンド社,2023年7月,136-137ページ  

4.まとめ

サウナに入るとうつ病のリスクが下がるのか、について調べてみました。
  • ①海外研究で「うつ病リスク低下」が明かされている
  • ②サウナドクターがうつ病患者の変化を目撃している
  • ③サウナがうつ病にいいのは、ホルモン・脳回路に変化をもたらすから
もちろん、サウナに入る=うつ病が治るとは言い切れません。 また、通院中の方、薬を服用中の方は、かかりつけ医に相談してからサウナに入るようにしてくださいね。
この記事を書いた人
ライター・はせがわみき
はせがわみきhttps://twitter.com/hamigaki_write
フリーランスライター・社会人になりたての頃、会社の先輩からすすめられた「サ道」を読んだことがきっかけでサウナへどっぷりはまる。サウナは歴8年。サウナスパ健康アドバイザー資格保持。好きが高じて、現在はサウナ施設・銭湯への取材・レポート記事をメインに手がける。好きなサウナは中温・高湿度。好きな水風呂は、ぬるめの18度。
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